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※簡単な調理法はこちらをクリックすると別画面で印刷できます。


調理開始


0、初めにひとこと



     それではこちらでは本格的に「アゴ」からとる「アゴダシ」の作り方について
     ご説明いたしましょう。
     「アゴ」というのは「とびうお」の九州での呼び名で、東日本など地域によっては、
     海の上をびゆううんと飛ぶ魚、ということは知っているけれどあまり料理としては
     馴染みがない魚かもしれませんが、九州では長崎県など多くの地域で昔からダシや
     料理に使われています。
     このアゴダシと通常の煮干し、かつおだしだけのダシとのちがいは、
     その上品な味とコクでございます。アゴという魚はご存知のように大変スリムな魚で
     ございます。それは大きく発達した胸びれで飛ぶために通常の魚よりも脂肪分が
     少ないからで、この脂肪分というのはよくいわれている「魚臭い」という部分の原因とも
     関係があると言われています。
     つまり、脂肪分が少ないのは、それだけ魚臭さが少ないということなのでございます。
     さきほどアゴダシの味を「淡白」ではなく「上品」とご紹介したのは、
     そんな魚臭さが少なく、しかしその身からでるコクのある旨みが
     アゴダシの特徴だからなのでございます。

     そんなアゴダシ、五島うどんなどで粉末パックもございますので、
     お手軽にご使用頂ける調味料ではございます。
     ではなぜ本格的にアゴからダシをとるのか。
     そのメリットをご紹介いたしますと、

     1、自分好みの味にすることができる。

     みなさんは普段調理されている、例えば煮物調理の際に、味付けにはこの色やこの味、
     しょうゆの量はこれぐらいなど、お好みの加減がございませんか。
     アゴダシは五島うどんに大変合うダシではありますが、煮物やスープとしても
     大変おいしいということは案外知られておりません。しかしみなさんお好みの味を、
     アゴダシで消してしまうのではもったいないと存じます。
     本格的にアゴからダシをとるということは、アゴダシの味を自分好みに
     工夫することができ、いつもの味そのままに、さらにアゴの上品な旨みを重ねて
     おいしくすることができる、実は大変便利な方法なのでございます。

     2、焼きアゴの香ばしさがもれなくついてくる。

     本格的にアゴからダシをとるときは、「焼きアゴ」を使用いたします。
     この焼きアゴとは、五島では夏から初秋にかけて盛んに行われるアゴ漁で採れたアゴを
     炭火でムラがないように焼き、天日でじっくりと乾かしたそのままでも
     大変おいしいものです。事実、のちほどまたご紹介致しますがダシをとり、
     こした後の焼きアゴはとても美味でございます。
     この焼きアゴからとれたダシは、一度炭火で焼いているので、味わった時にほんのりと
     いい加減で香ばしさがお口の中にただよいます。これは粉末にはマネのできない、
     そしてアゴダシを召し上がるという経験をされたい方には是非味わっていただきたい
     「ちょっと工夫したご褒美」
といえると存じます。

     3、調理が俄然楽しくなる。

     調理されるかたはご存知だとは思います。
     「高い食材、珍しい食材には、調理に手を抜くことはない」
     例えば高級なお肉でございますと、その調理に普段以上に手を抜く、
     ということはないと存じます。しかしそれはいつも以上にがんばる、張り切る、
     家族にはあらかじめ帰り時刻の申し合わせの連絡をする、ご町内にはいつもより慌しく
     買い物に走ることでそれとなくしかし参加は断固拒否するという姿勢で
     「高級肉での夕食開催」の予定を知らせる、食事の際にはテレビは消す、
     主電源から切る、この肉以上のニュースなんてありえないと信じる、
     食事以外に目を離したその時は愛も離れた時だと見なす、など、
     少々緊張感がはしるものになり、楽しい調理とは言い難いものと存じます。
     その点この焼きアゴのようにどちらかというと「珍しい食材」はなぜか少し
     いつもの調理が楽しくなるものでございます。それはきっと毎回は手に入りにくいと
     なりますと、食材をそれこそ「あたまからしっぽまで」大切に使われ、
     そうすることで普段の調理が特別なものになるからでしょうか。

     4、意外と簡単である。

     ここからは、少々内密に教えたい事柄でございます。
     と申し上げるのには、理由と根拠がございます。
     その理由は一言で申しあがると、
     「ほっといても焼きアゴがおいしくしてくれる」
     からで、その根拠ですが、煮干し等で「はらわたを一つ一つ取る」という
     あの少々面倒な工程が、
     「まったくないから」
     でございます。
     実は焼きアゴにはもれなく、初めから「はらわた」が取り払われております。

     しかし、「でも調理のダンドリがいろいろと面倒なんでしょ」という
     疑り深い方もおられましょう。
     そこで、お待たせいたしました。それではさっそくアゴダシの調理の
     「ダンドリ」のほうをご説明致しましょう。最後までごゆっくりとご鑑賞下さいませ。


1、ダシの入れ物を用意し、
  焼きアゴを3尾、入れる。



     では最初に、アゴダシのベースであり、さまざまな調理の基本となる
     アゴから「水だし」でアゴの旨みを引き出す方法をご説明致しましょう。
     ちなみに「水だし」とは、火を使わず水で材料を長時間寝かせて
     「焼きアゴ」など煮干しから旨みを引き出すことを指しております。
     初めに、アゴからたっぷりとダシをとるために、ビン、陶器、ボウル、缶、鍋、
     やかん、ジョッキ、フライパン、ミニフライパン、深蓋、井戸、冷たい麦茶用のビンなど
     600ccほど水が入り冷蔵庫にも入れられそうな容器を、各自ご用意下さい。
     そこに焼きアゴを3尾入れます。このとき頭、尻尾どちらからでも結構です。
     もちろん縦でも横でも斜めでも結構です。

     この時に大切なのは、「作り始める時間」でございます。上記「調理時間」の欄に
     「一晩とちょっと」とございますように、このアゴダシ作りはほとんど手間は
     かかりませんが時間だけはかけて頂かなければならない料理となっております。
     ですので「あ、今からアゴダシを使いましょ」と思ったときに器に
     焼きアゴ入れられましても遅い、のでございます。肝心なのは
     「使う一日前の晩に作り始める」
     もしくは、
     『「焼きアゴ」がお手元に来たその日の晩に作り始める』
     ということでございます。そうすれば、なんと次の日の朝食から、
     アゴダシを使うことが出来るという利点を、しかも御自分は寝ているなり
     夜更かしするなりと、文字通り「ほっておく」だけ、という簡単極まる方法で
     可能となるのでございます。また、焼きアゴがお手元に来たのなら、せっかくだから
     早く味わいたいもの。ですのでその日の晩に作ると決める、というのもわかりやすく
     憶え易いのでよろしいかもしれません。

     ですからどうか、
     「そんな遠い先のことなんてわからない」といういささか破天荒な生き方は
     考え直していただいて、少しだけ計画的に、知的に
     「一日前に作って後で楽をする」
     という、寓話「アリとキリギリス」で例えるところの
     「若干アリ寄り」な生き方をこの場合ご選択頂きたい
と存じます。


2、5センチ角の昆布を一枚、
  容器に入る大きさに切って、入れる。



     次に、同じく「水だし」用の昆布をご用意しましょう。
     昆布の種類は今回の写真では利尻昆布を使用致しましたが、
     「ダシとり用」であれば生産地は問いません。大きさとしましては、
     5センチの正方形ほどの量で結構と存じます。
     これを入れる容器に入るように切る、もしくはそのままでも入るなら切らないで、
     入れましょう。
     そうすると写真のように、アゴダシ3尾と昆布だけが入った形になります。


3、水を3カップ、約600㏄を注ぐ。



     焼きアゴ、昆布を入れた容器に、今度は水を3カップ、約600㏄を注ぎましょう
     水は何でも結構ですが、水道から直接容器に、ではなく、ダシの出る具合や、
     味の濃さも大体ここで変わって参りますので、きちんとカップ等で
     量を測ってから入れるように致しましょう。


4、日本酒を大さじ1杯入れる。



     水の後、もしくは前でもかまいませんが、日本酒を大さじで一杯ほど入れましょう
     これは味を引き立たせるためでございます。
     日本酒の銘柄は特にこだわらなくともよいですし、また日本酒が無いので
     新しく買ってしまった、この後は特に使いようがない場合は飲む、捨てる、
     日の当たらない涼しい場所にとって置く等、どのようにして頂いても結構でございます。


5、一晩寝かす。



     以上のものをすべて容器に入れましたら、なんと冷蔵庫に入れるだけで
     「アゴの水だし」作りは以上となっております。
     あとは冷蔵庫で一晩ほど寝かすだけでございます。
     寝かすと言いましても「容器は横にしなければいけない」
     というわけではございません。縦でも横でも斜めでも、冷蔵庫の空いている
     スペースの問題を鑑みて頂いてから置くということでございます。
     ではここで、一体、寝ている間にどのような変化が容器の中で、
     起ころうとしているのか、ご説明したいと存じます。

     短編小説「ダシ寝かしの夜」

        こんなに寝つけない夜が、今まで果たしてあっただろうか。
     何度も寝返りをうつ度に、聡子はそう思った。
     寝室の電波式デジタル時計はちょうど午前一時と表示している。
     昔で言えば牛六つ時のこの時間まで、寝床に入ってからもう
     かれこれ数時間も眠れない状態が続いているのは、この家に
     嫁いできた聡子にとっては、初めての出来事であった。

     「こんなに眠れないのは、・・・子供の頃の遠足以来ね」

     そう思うほど聡子は、受験日前日であっても結婚式の前夜も、
     自分でも説明が出来ないほど寝つきの良い女だった。
     元来緊張や心配というストレスを感じない強心臓の持ち主であった
     聡子だが、どんな時でも夜になると眠れるのは、生まれてから今までの
     「どんなことがあっても10時には蒲団に入る」という、実母から
     受け継いだ規則正しい生活習慣の賜物、と言えるかもしれない。
     しかし、今夜の聡子の心中にある感情はそんな恐怖や心配といったもの
     ではなく、子供の頃の遠足前夜とある意味共通している「興味」から
     きている「好奇心」と呼ぶべきものであった。

     どんな人間社会にも「例外」と呼ばれる人・事象・現象があるように、
     聡子の「どんな時」という平生の中にも「例外」はもちろん存在する。
     どんな時であっても眠れる聡子が今夜、起きているのは、

     「冷蔵庫の「水だし」は、いつごろ色が透明からダシ色に変わるのか」

     という、

     「常々考えていた疑問についに今夜結果が出るかもしれない」

     からであった。

     もうこれは行動を起こすしかない、と聡子は起き上がる決心をした。
     子供じみた行動だと自分自身考えていても、仕方がない。
     だってそう考えても眠れない自分が今ここにいるのは歴然たる事実だし、
     眠れない原因はワクワクしているからなのも事実ダシ・・・ね。
     そう自分をなぜか慰めながら、聡子は部屋の立掛け式の電波式デジタル
     時計と鉛筆付きのメモ帳を手に冷蔵庫の前にやってきた。

     冷蔵庫の一番大きなドアを開け、アゴダシと昆布、日本酒と水が入った
     ガラス製の瓶を取り出して、じっくりと中身を見、又冷蔵庫の元の場所に
     戻して、聡子はほっ、と胸をなでおろしたような安堵感に包まれた。
     まだ、瓶の中の色は、変わっていない。
     まだ、私だけのショーはまだ始まっていない・・・、そう思うと同時に
     聡子は素早く時刻を見、メモ帳にこう書き記した。

     「午前一時一分、ダシの色の計測開始。色、変化なし」

     それからの聡子は、どうせ観察をするのなら、いっそよりよいもの
     にしようと努力をした。冷蔵庫の前に定期的な観察のために椅子を置き、
     夜分なので明かりをつけて家族の迷惑になっていけないという思いと、
     メモを正確に書くため、瓶の中の様子を細やかに見ることができ、
     そのうえなにか「持っていると真面目に観察をしている感じが出るから」
     という理由で、部屋からペンライトを持参した。

     「午前一時二分、ダシの定期観察。色、変化なし」

     静かな夜、冷蔵庫を開け、瓶にペンライトの細い光を当てながら黙々と、
     しかし堅実に観察を続ける聡子。メモをとりながら聡子は、冷蔵庫から
     出したまま観察しても良いのでは、とも考えたが、本当ならばひと晩一度も
     出されること無く寝かす予定で入れたアゴダシの瓶を、そう易々と簡単に
     環境を変えてよいものなのであろうか、とも考え、観察学的、また調理をする
     ものとして思考を重ねた結果、そのままにしておこうと結論付けた。

     「午前一時三分、ダシの定期観察。色、変化無し」
     「なにをしているの、聡子さん」

     突然後ろからの義母の一言に、聡子は思わず瓶を床に落としそうになる程
     驚いた。その時の聡子のあわてぶりは、思わず

     「いえ冷蔵庫がね、お義母さま」

     というよく考えれば意味不明な言葉にも表れていたが、アゴダシの瓶を
     元の場所よりも手前近くに置いてしまうという行動にも現れていた。

     「冷蔵庫、冷蔵庫がどうしたのよ、聡子さん」
     「いえ、正確に言うと冷蔵庫ではなくて、冷蔵庫の中のアゴダシが
      ちょっと気がかりになったので」
     「ああ、アゴダシね。聡子さんもしかして・・・、
      ダシの色が変わるのを見にきているの」
     「え、どうしてそれを。お義母さまもですか」
     「やあねえ、私は厠に行こうとしていたら台所でブツブツ声が聞こえるから
      見に来たの」
     「す、すいませんお騒がせして。でもどうして・・・」
     「それはね・・・ふふふ。ちょっと待っててね」

     そう言い残し部屋へ戻っていった義母をただ呆然と見送った聡子であったが、

     「一時四分、ダシの定期観察。色、変化無し」

     という時間通りの観察は抜かりなかった。
     しかしこのままというわけにはいかないと、冷蔵庫の前の椅子を戻して
     先ほどの義母の含み笑みを思い出しながら、聡子は義母の部屋の方向へ
     向かった。

     「聡子さん、あった、あったわよ」

     義母はルーズリーフ帳を手にそう小声でささやくと、聡子を書斎に誘った。

     「ここだったら明るくしても迷惑かからないわよね」
     「ええ、そうですけど、お義母さまそのノートは」
     「これはね、私の秘密なの。特別に、いや同志と思えばこそ、
      あなたに見せたくてね」
     「同志って一体・・・」

     言葉の真意がわからないまま、聡子は義母に渡されたノートをめくった。
     そこには、やわらかい義母の文字で、こう書かれていた。

     「昭和61年10月18日午前2時1分、観察開始。
      目的は、アゴダシの色の変化は何時であらんか」

     「お義母さま、これは・・・アゴダシ観察記」
     「そう。実は私も昔、気になっていた時期があったのよ。
      どうしょうか悩んだんだけど、これはもしや後世に伝えるべき
      大切な記録になるんじゃないかしらって、思ってね。
      聡子さんは、どうやって決心して、観察したの」
     「決意、ですか」
     「だってそんな簡単に蒲団から夜中出るなんて踏ん切りがつかないでしょう」
     「そうですね・・・私の場合は・・・、やっぱり、ただ気になったもので」
     「・・・そうよね。やっぱりそうよね。よかったあ、私だけじゃなくて」
     「え、お義母さまもそうだったんですか」
     「ええ。私も今思うと、自分自身に言い聞かせながらも、
      やっぱり一番の理由はワクワクしたからだったんだなって。今思うとね」
     「そうなんです、私もワクワクしたらどうしても起きずには
      いられなくって」
     「あら、聡子さんペンライト持参」
     「これあると便利ですよ、観察にもメモ書きにも」
     「へぇ、それは私考えもしなかったわ」
     「なんかこうやってペンライトを瓶に当てて観察すると、気分が出るんです」
     「しっ、静かに。・・・・・・なにか台所で物音がしてない聡子さん」
     「・・・本当だ。しますね確かに」
     「ひょっとして・・・、聡子さん台所に急行しましょ」
     「なにかあるんですかお義母さま」
     「私のカンが正しければ、・・・アゴダシに危険が及ぶかも」

     そう言いながら二人は台所へと素早く、しかし忍び足で向かった。

     冷蔵庫の前には、だれかがいる。

     内部の光に照らされて、猫背の物影が、ゆっくりと台所を動いている。

     「また、あなたなの。あの時と同じ、あなたなのね・・・」

     そう悲しげにつぶやく義母の声を聞こえてはいた聡子であったが、
     それよりも目の前の影が、それこそ悪魔がゆっくりと獲物を顔前へ向けて
     獲物に恐怖を振りかけてからひと飲み、とするような仕草を見て思わず、

     「お義父さま!それは飲まないで!
     それは『アゴの水だし』ですよ、
     お義父さま!」


     と叫ばずには、いられなかった。しかしアゴダシの素が入った瓶の口から
     見事に飲み干した義父は、間髪入れずに叫んだ。

     「これはダシ茶じゃ!!」

     「あの人、あの時もそう言ったのよ・・・ほら」
     そう言って義母は聡子に自分のノートの最後を見せた。
     同じこと、同じ悲劇が記されているその箇所をみながら、聡子は
     なぜ義母がこのことを一度も私に話さなかったのかが理解できた。
     そして義母は、なぜ聡子を冷蔵庫で見かけたときに、懐かしさと同時に
     危険信号のような動悸が胸打ったのか、思い出すことが出来た。


     冷蔵庫の前では、義父が飲み干したアゴダシの瓶に蛇口から水を直接
     並々と注ぎながら、

     「これは冷たく冷えたダシ茶じゃ」

     と言い旨そうに飲んでいる。義母はもう寝た。
     聡子は自分のメモ帳にこう書き記し、筆を置いた。

     「午前一時五分、ダシの定期観察。苦労、台無し」

     遠くから風鈴の音が空しく聞こえる、八月のある晩のことであった。

                                (終)



6、アゴの水だしを鍋に入れ、温める。



     こちら、上の写真は味付けの無い「アゴの水だし」を冷蔵庫で一晩
     そのまま寝かせたものでございます。いかがでしょう、ダシだけの状態でもほんのりと
     琥珀色になっていることがお分かりになられますでしょうか。


     さて、今度はこちらの「アゴの水だし」を温めて味を加え、
     「アゴダシ」にする調理方法をご紹介致しましょう。
     まずは上のように、「ダシの素」をすべて、アゴダシや昆布など
     すべて、容器からお鍋に出しましょう。そして、そのままお鍋に火をかけて、
     温めましょう。このときから後に述べます「こす」という動作まで、
     火は止めなくとも結構でございます。


     さ、しばらくすると上の写真の如く、グツグツと煮えてまいります。
     そうしましたら、次の工程へと進みましょう。


7、かつお節を入れ、ひと煮立ちさせる。



     「アゴの水だし」が入ったお鍋に湯気が出て参りましたら、そこにかつお節を
     加えます。加えますかつお節の量ですが、今回の4人分ほどの量で言いますと
     5gから15gほどでよろしいかと存じます。

     なぜここでかつお節を加えるのかと申しますと、煮干しとかつお節でとれるダシとの
     違いに理由がございます。煮干しでとれるダシは他の調味料に負けない
     特徴ある味に比べ、かつお節でとれるダシは直接味わうことになるお吸い物や
     茶碗蒸し等に使われますように、大変上品なお味が特徴です。
     ですからこのアゴダシの場合は煮干しなどを使うよりも、かつお節の上品な味を
     加えた方が、アゴダシの味を損なう事がなく、またアゴダシの上品な味とも
     よく合うからなのでございます。

     かつお節を入れましたら、そのまま鍋を火でひと煮立たちさせましょう。
     これはアゴダシ、昆布、日本酒、かつお節の全体の味をうまくなじませるため
     ということと、日本酒のアルコールを完全に飛ばして、風味だけを残すために行います。


8、火を止めて、「こす」。



     鍋の中がひと煮立ち致しましたら、火を止めて「こす」ことに致しましょう。
     「こす」というのはお鍋の中のダシ汁だけを使うため、水分だけを透過させる布地、
     またはそれが可能な繊維状の形態を使うことでございますが、もともとは布地を一般的に
     使用されていましたし、よくダシを作られるご家庭やよく「こす」ご家庭では「こし布」
     というものをお持ちだと存じますが、今回は初めてされるという方や、
     「こし布はちょっと・・・」と感じる方のことを考慮して、「クッキングペーパー」
     行います。
     
     「クッキングペーパー」と申しましてもさまざまな用途に合わせたものがございます。
     例えばキッチンのふき取り用のものも「クッキングペーパー」ではありますが、
     ご注意頂きたいのは今回は「こす」ための「クッキングペーパー」が必要ですので
     「こせます」「こし用」「こせる用」等液体を通せる分厚い「クッキングペーパー」
     使用頂きたいと存じます。
     これは決して私が「クッキングペーパー」という言葉が述べたくて
     「クッキングペーパー」と何度も多用しているのではなく、
     すべての「クッキングペーパー」ではなくあくまでも「こす」ための
     「クッキングペーパー」であると申し上げたいから「クッキングペーパー」
     書いているのでございます。蛇足ですが、「クッキングペーパー」という言葉は
     言うと『クセになる』ことばでございます。どうか努々、その魔力に
     のめりこめないように老婆心ながらご忠告いたします。


     また、鍋のダシを「こす」際には、高温のダシのハネには十分気をつけることは、
     他の五島うどんの調理法各項目でもご紹介致しましたので多くは申しませんが、
     努々、お忘れになることはありませんようにと老婆心ながら一言申し上げます。


9、薄口しょうゆを味付けに多め、
  濃口しょうゆを色付けに少なめに
  お好みの量を入れる。



     さて、いよいよアゴダシ料理も最後の味付けへと進んで参りました。
     これも皆様の陰ながらのご声援があったものと存じます。
     このように、ダシをこした結果、ダシはきれいな琥珀色をなりました。
     あ、そうそう。私としたことが、お約束を忘れてしまいそのまま進行するところで
     ございました。このいわゆる「一番だし」の時に残った焼きアゴと昆布、
     かつお節ですが、よく考えますとこのままの状態で「よく煮えた煮物」とも
     言える状態ですので、捨てるのはもったいないいわゆる「MOTTAINAI」状態で
     ございますし、実はこの時の煮えた焼きアゴは、大変美味しいと地元五島でも
     食されております。ぜひこの調理の際はお台所で『料理人だけのご馳走』として
     その味付けのない「アゴだけ」の野趣あふれる妙味をご堪能して頂きたいと存じます



     さて「アゴダシ」の最後の調理をご説明してまいりましょう。
     この肝心の「アゴダシ」に、今度は薄口しょうゆと濃口しょうゆを味付けに
     入れていきましょう。量のほうですが、それは各御家庭の味に倣った用に各自で
     お味見をして頂きながら入れて頂いて結構でございますが、「薄口しょうゆ」は
     味付けとして「濃口しょうゆ」は色付けとして、それぞれお考えになったほうが、
     おいしく出来上りますので、
     「薄口しょうゆ」は「濃口しょうゆ」より多めに、
     「濃口しょうゆ」はほんの少しだけ、

     という目安で、お入れになればよいと存じます。


10、少量のみりんで味をととのえる。



     仕上げに、みりんをこれまたほんの少し、アゴダシに入れましょう。
     みりんをほんの少し入れることで、全体の味がまろやかにととのいます。
     量ですが、くれぐれも入れ過ぎない様に、ほんの少しと致しましょう。


11、最後に味見をしながら煮切る。



     薄口しょうゆ、濃口しょうゆ、みりんをお入れになられましたら、
     また鍋に入れて、火にかけてお味見を致しながら、煮切りましょう。
     この時にはお味見をして頂いて、しょうゆ、みりんの味を調節して頂くことと、
     みりんのアルコールを飛ばすために、煮切るまで火をかけましょう。
     はい、煮切りましたら火を止めていただいてもう結構です。
     これにて、「本格的なアゴダシ」の完成でございます。
     最初にご説明致しましたように、至極簡単でございますので、どなた様にも、
     料理が苦手という方には特におすすめの美味しさとなっております。



12、できあがり。




     いかがでしたか?私が紹介させて頂きますのは、ここまで。
     あとは、皆さんの食卓で、ぜひお試し下さい。
     では、次の料理でお会いいたしましょう。ごきげんよう。

   

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